人を動かすデール・カーネギー『人を動かす』の表紙
本要約

人を動かす

デール・カーネギー 著 · 1936

この本を 3 行で要約

  1. 『人を動かす』は、デール・カーネギーが 1936 年に発表した人間関係の古典で、人とうまく付き合う力は生まれつきの才能ではなく、学んで身につけられる技術だと説きます。
  2. 土台にあるのは、人は理屈より感情で動き、誰もが自分を重要な存在だと感じたがっているという人間観で、だからこそ批判は反発を招き、誠実な関心と評価は人の心をつかみます。
  3. 具体的な教えは、人を動かす三原則、人に好かれる六原則、人を説得する十二原則、人を変える九原則の四部、計 30 の原則にまとめられています。

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表紙画像提供:Open Library

『人を動かす』の要点

批判しても人は変わらない

三原則の一つ目「盗人にも五分の理を認める」は、批判も非難もせず、苦情も言わないことを求めます。カーネギーはまず、悪名高い犯罪者でさえ自分は正しいと信じているという例を挙げます。人はめったに自分を責めないので、批判された側は身構えて言い訳を探し、傷ついた自尊心は反感として長く残ります。相手に変わってほしいときほど、批判は最も効き目の薄い手段だというのです。

実践のヒント 1 日だけ、口にしかけた不満や小言を飲み込み、その回数を数えてみましょう。

誰もが「重要な存在」でありたい

二つ目の原則は「重要感を持たせる」です。カーネギーは哲学者ジョン・デューイを引きながら、自分は重要な存在だと感じたいという欲求を人間の根本に置き、多くの助言をそこから組み立てています。率直で誠実な評価はこの欲求を満たし、批判はそれを脅かします。ただし、評価とお世辞は別物です。心からの評価は相手に向けたもの、お世辞は自分の得のためのもので、相手にはすぐ見抜かれます。

実践のヒント 今日、誰か一人に、その人の行動のどこがよかったのかを具体的に伝えましょう。

相手が欲しがっているものから話す

三つ目の原則「人の立場に身を置く」は、自分が欲しいものではなく、相手が欲しがっているものを出発点に考えることです。カーネギーは、釣り針には自分の好物ではなく魚の好物をつける、というたとえで説明します。人は自分の欲求に従って動くので、何かを頼む前に、相手にとってどんな得があるかを考え、それを話題にします。この視点は、本書後半で扱う説得や人を変える原則の多くにも通じています。

実践のヒント 次に頼みごとをする前に、相手が引き受けたくなる理由を一つ書き出しましょう。

話し上手より、相手への関心

人に好かれる六原則には、自分をよく見せるための技術が一つもありません。誠実な関心を寄せる、笑顔を忘れない、名前を覚える、聞き手にまわる、関心のありかを見抜く、心からほめる。どれも意識を自分ではなく相手に向けるものです。自分を印象づけようと努力するより、相手に本気で興味を向けるほうが人間関係はずっと早く深まる、というのが六原則を貫く考え方です。

実践のヒント 次の会話では、自分の話をする前に、相手の話について質問を二つしましょう。

議論に勝っても、相手の心は離れる

人を説得する十二原則は「議論を避ける」から始まります。言い負かされた相手は面目を失って反感を抱き、考えをかえって固くするため、議論に勝っても好意は得られません。相手の意見には敬意を払い、誤りを正面から指摘しないこと。反対に、自分が間違っていたときは、先に自分から潔く認めます。そうすると相手は寛大になり、話し合いから対立の空気が消えていきます。

実践のヒント 次に意見が食い違ったら、自分の考えを言う前に、相手の考えについて一つ質問しましょう。

結論は相手に思いつかせる

人は、人から与えられた結論より、自分でたどり着いた結論を大切にします。そこでカーネギーは、穏やかに話し始め、相手が「イエス」と答えられる問いから入ることを勧めます。最初に同意を重ねておくと、その後も同意を得やすくなるからです。話す時間の大半は相手に譲り、答えを押しつけずに、相手が自分で思いついたと感じられるよう導きます。

実践のヒント 次の指示を質問の形に変え、答えの中身は相手に考えてもらいましょう。

面目を保ったまま人を変える

人を変える九原則は、どれも相手の自尊心を守るための工夫です。まずほめてから本題に入り、誤りは遠まわしに伝え、注意する前に自分の過ちを話します。命令ではなく提案や質問の形で頼み、叱る場面でも顔をつぶしません。わずかな進歩でもほめ、相手に高い評価を与えて、それにふさわしくなろうと思わせます。直してほしい点は、簡単に直せるものに見せて励まします。

実践のヒント 誰かに注意する前に、その人のよかった点と、自分の似た失敗を一つずつ思い出しましょう。

『人を動かす』の早見表:全 30 原則

30 の原則を本書の四つの部に沿って、日本語版(創元社)の呼び名で並べ、短い説明を添えました。前半の二部は人と良い関係を築くための原則、後半の二部は人を説得し、変えるための原則です。付録「幸福な家庭をつくる七原則」もありますが、この表には含めていません。

部原則
人を動かす三原則第一部
  • 盗人にも五分の理を認める:批判も非難も苦情もしない
  • 重要感を持たせる:率直で誠実に評価する
  • 人の立場に身を置く:相手の欲求から考える
人に好かれる六原則第二部
  • 誠実な関心を寄せる:相手に本気で興味を持つ
  • 笑顔を忘れない:表情で好意を伝える
  • 名前を覚える:名前は本人にとって特別な言葉
  • 聞き手にまわる:相手に自分の話をしてもらう
  • 関心のありかを見抜く:相手が好きな話題を選ぶ
  • 心からほめる:お世辞ではなく本心で認める
人を説得する十二原則第三部
  • 議論を避ける:勝っても好意は得られない
  • 誤りを指摘しない:相手の意見に敬意を払う
  • 誤りを認める:自分の非は先に潔く
  • 穏やかに話す:友好的に切り出す
  • 〝イエス〟と答えられる問題を選ぶ:同意できる点から入る
  • しゃべらせる:話すのは主に相手
  • 思いつかせる:相手の発案だと感じてもらう
  • 人の身になる:相手の視点で考える
  • 同情を寄せる:相手の考えや望みに寄り添う
  • 美しい心情に呼びかける:相手の高潔な動機に訴える
  • 演出を考える:考えを印象的に見せる
  • 対抗意識を刺激する:競争心や挑戦心に火をつける
人を変える九原則第四部
  • まずほめる:耳の痛い話の前に長所を認める
  • 遠まわしに注意を与える:誤りは間接的に伝える
  • 自分の過ちを話す:注意の前に自分の失敗を
  • 命令をしない:提案や質問の形で頼む
  • 顔をつぶさない:相手の面目を保つ
  • わずかなことでもほめる:小さな進歩も認める
  • 期待をかける:高い評価に応えようとさせる
  • 激励する:欠点は直しやすいと思わせる
  • 喜んで協力させる:相手が進んで動ける形にする

30 の原則に共通する前提: 人は理屈より感情で動き、誰もが大切に扱われたいと願っています。だから話は、自分ではなく相手の側から始めます。

理解度チェック

読み返すより、思い出すほうが記憶に残ります。答えを見る前に考えてみましょう。

  • 人を動かす三原則の一つ目は何ですか?

    答えを見る

    盗人にも五分の理を認める。

    批判も非難もせず、苦情も言わないこと。悪名高い犯罪者でさえ自分は正しいと思っている、という例から始まります。

  • 人に好かれる六原則の一つ目は何ですか?

    答えを見る

    誠実な関心を寄せる。

    自分に関心を持ってもらおうとするより、相手に心から関心を持つ方が、はるかに早く友人ができるとされます。

  • 人を説得する十二原則の一つ目は何ですか?

    答えを見る

    議論を避ける。

    議論に勝っても、相手の好意を得ることはできないからです。

  • 相手に恥をかかせないことを説いた原則は何ですか?

    答えを見る

    顔をつぶさない。

    叱ったり降格させたりする場面でも相手の面目を保つことが、その後の関係を守ります。

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『人を動かす』は読む価値がありますか?

読む価値は十分にあります。例に出てくる時代は古いものの、原則そのものは今も通用し、わかっていても実践するのが難しいことばかりです。

こんな人におすすめ

  • 議論には勝つのに、なぜか人が離れていく人
  • 部下やお客さまと毎日向き合う立場にある人
  • 初対面の人との会話に苦手意識がある人

拾い読みで十分な人

  • 説得や交渉の本を読み慣れていて、似た話が多いと感じそうな人
  • 上の早見表で 30 の原則を確認できれば十分な人

物足りない点

  • 根拠の多くは政治家や実業家、講座の受講生などの逸話で、研究にもとづくものではありません。
  • 誠実さが伴わなければ原則はただの操作術になります。カーネギー自身は心からの関心を強調していますが、それでもテクニック集として読まれがちです。
  • 取り上げられる人物や場面は 20 世紀前半のアメリカが中心で、今の読者には古く感じられるところがあります。

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