ヴィクトール・E・フランクル 著 · 1946
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フランクルは被収容者の心理を、収容された直後、収容所での生活、解放された後の三つの段階に分けて描きます。到着したばかりの人々は、自分は最後には助かるのではないかという根拠のない希望、恩赦妄想にすがりました。生活が続くと感情が鈍り、何事にも心が動かなくなる「感動の消滅」(アパシー)に陥ります。耐えがたい苦しみから心を守るための反応です。そして解放された後でさえ、人はすぐには喜びを実感できず、新たな失望にも向き合うことになりました。
実践のヒント 大きな変化を経験したとき、自分の心がどんな順に揺れ動いたかを振り返ってみましょう。
収容所では、家族も持ち物も奪われ、名前の代わりに番号で扱われました。どんな状況に置かれても、それにどう向き合うかだけは自分で決められるとフランクルは記し、これを人間に残された最後の自由と呼びます。実際に、自分も飢えに苦しみながら仲間を励まし、乏しい食べ物を分け合う人たちもいました。これは苦しみを受け入れよという意味でも、加害者を許せという意味でもありません。どんな状況も、その人のあり方のすべてを決めることはできない、ということです。
実践のヒント どうにも変えられないつらい出来事に向き合うとき、自分がどんな態度をとりたいかを考えてみましょう。
生き延びる力を支えたのは、未来に目的や希望を持っていることだったとフランクルは述べ、ニーチェの言葉も引いて、生きる目的を持つことの力を強調します。自分を待っている人や、自分にしか果たせない仕事があると気づいた仲間は、生きることを投げ出さなくなりました。反対に、未来を信じられなくなった人は心身ともに急速に崩れていきました。1944 年のクリスマスから新年にかけて死者が急に増えたのは、「クリスマスには家に帰れる」という希望が裏切られたためだと、収容所の医師は見ていました。
実践のヒント 自分を待っている人や、自分にしかできない仕事を一つ書き出しましょう。
過酷な日々の中で内面の豊かさを保つ助けになったのは、愛する人の面影や、自然や芸術の美しさでした。フランクル自身、生死もわからない妻と心の中で語り合うことで支えられたと記しています。苦しい現実をいっときでも笑いに変えるユーモアも、自分を保つ支えになりました。重労働の最中には、戦後に講演の場で収容所の心理について話している自分を想像しました。苦しみを外から観察する対象に変えることで、心の平衡を保とうとしたのです。
実践のヒント つらい状況にいるときは、それを後で誰かに説明する自分を想像し、少し距離をとってみましょう。
フランクルの思想で最もよく知られているのが、生きる意味についての発想の転換です。生きる意味を人生に求めるのをやめ、人生の側から自分が問われていると考えます。その問いには、言葉や思索ではなく、その時々の行動と態度で答えます。生きる意味は誰にでも当てはまる一般的な答えではなく、人によって、また場面ごとに異なる具体的なものです。だからこそ、自分の代わりに答えられる人はいません。
実践のヒント 何がしたいかではなく、いまの自分に求められていることは何かを書き出しましょう。
フランクルは、収容所の人々を、被収容者か監視する側かという立場で単純に分けませんでした。被収容者の中にも仲間を踏みにじる人がいた一方で、監視する側にも人間らしさを失わない人がいたと記しています。人を分けるのは所属や立場ではなく、極限の状況でも人間らしい品位を保てるかどうかでした。避けられない苦しみにどう向き合うかにも、人間の尊厳が表れると考えました。
実践のヒント 誰かを肩書きや所属で判断しかけたら、その人自身のふるまいに目を向け直しましょう。
収容所での観察から生まれたフランクルの主な考え方を、一つの表にまとめました。
| キーワード | 意味 |
|---|---|
| 心理の三段階 |
|
| 最後の自由 | どんな状況に置かれても、それにどう向き合うかだけは自分で決められる。 |
| 未来への目的 | 未来に希望を持ち、自分を待つ人や仕事を自覚することが、生きる力を支える。 |
| 内面の支え |
|
| 人生からの問い | 人生に意味を求めるのではなく、人生から問われていると考え、行動と態度で答える。 |
| 一人ひとりの意味 | 生きる意味は共通の答えではなく、人と場面ごとに異なる具体的なもの。 |
| 苦しみへの向き合い方 | 避けられない苦しみにも意味があり、それにどう向き合うかに人間の尊厳が表れる。 |
| 人間の品位 | 人を分けるのは立場ではなく、人間らしい品位を保てるかどうか。 |
| ロゴセラピー | フランクルが創始した、人が自分の生きる意味を見いだすことを支える心理療法。日本語版には、英語版後半のロゴセラピー解説は収録されていません。 |
| 題名『夜と霧』 | ナチス・ドイツが 1941 年に出した、反抗者をひそかに連行して消息を絶たせる命令の通称。日本語版でつけられた題名。 |
心に留めておきたいこと: 本書は苦しみを勧めているのではありません。語られているのは、避けようのない苦しみの中で、それでも人がどう生きられるかです。
読み返すより、思い出すほうが記憶に残ります。答えを見る前に考えてみましょう。
本書は、被収容者の心理をいくつの段階に分けて描いていますか?
三つ(収容された直後、収容所での生活、解放された後)。
フランクルによれば、すべてを奪われても人に残る「最後の自由」とは何ですか?
与えられた状況に対して、どのような態度をとるかを選ぶ自由。
この自由だけは、誰にも奪うことができないとされます。
「生きる意味」について、フランクルが示した発想の転換とは何ですか?
人生に意味を求めるのではなく、人生の側から自分が問われていると考えること。
生きる意味を見失いかけた仲間に、フランクルが気づかせようとしたことは何ですか?
自分を待っている人や、自分にしか果たせない仕事があること。
そのことを自覚した人は、生きることを投げ出さなくなると本書は述べます。
読む価値があります。短い本ながら、強制収容所の現実と、生きる意味についての静かで人間的な考察を一冊で読めます。